太陽光発電設備についてFIT・FIPの認定や変更認定を申請する際、次のような疑問をお持ちの事業者様も多いのではないでしょうか。
- 住民説明会は必ず開催しなければならないのか
- 低圧の野立て太陽光なら説明会は不要なのか
- パワコンの交換や発電所の名義変更でも説明会が必要になるのか
2024年4月に施行された改正再エネ特措法により、一定の再エネ発電事業について、認定申請に先立って周辺地域の住民に対する「説明会」または「事前周知措置」を実施することが認定要件となりました。
ただし、すべての太陽光発電事業で住民説明会の開催が必要になるわけではありません。
設備の出力、設置形態、立地する区域、申請内容などによって、次のように対応が分かれます。
- 説明会の開催が必要なケース
- 説明会または事前周知措置を選択できるケース
- 説明会等が原則として不要なケース
この記事では、資源エネルギー庁の「説明会及び事前周知措置実施ガイドライン(2026年4月改訂)」をもとに、太陽光発電事業における説明会等の要否と判断基準を解説します。
「説明会」と「事前周知措置」の違い
最初に押さえておきたいのは、「説明会が不要=何もしなくてよい」ではないという点です。
制度上、周辺地域の住民に対して行う措置には、次の2種類があります。
- 説明会:ガイドライン所定の方法で住民に開催を案内し、会場で事業内容や地域への影響、予防措置などを説明して質問に対応する手続き
- 事前周知措置:ポスティング、戸別訪問による書面配布、一定のインターネット掲載などによって、必要事項を住民に周知する手続き
ガイドラインでは、この2つを総称して「説明会等」と呼んでいます。
したがって、説明会の開催が義務付けられていない案件であっても、事前周知措置が必要になることがあります。
また、事前周知措置は、単に簡単なチラシを配布すれば終わるものではありません。ガイドライン所定の事項を周知したうえで、実施後2週間以上にわたって住民からの質問等を受け付け、書面で誠実に回答する必要があります。
説明会等が原則として不要となる太陽光発電
国のFIT・FIP制度上、次の太陽光発電事業は、原則として説明会等の対象から除外されています。
- 出力10kW未満の太陽光発電事業(住宅用太陽光発電事業)
- 屋根設置太陽光発電事業
ここでいう屋根設置太陽光発電事業とは、建築物の屋根に設ける太陽光発電設備によって実施する事業を指します。事業用・産業用であっても、この定義に該当する屋根設置設備であれば、原則として説明会等の対象外です。
ただし、屋根設置太陽光については、事業による影響や予防措置などについて、説明会等の実施に努めることとされています。
また、再エネ特措法上は対象外でも、自治体の条例によって独自の説明会、事前周知、届出などが求められる場合があります。国の制度上の判断だけで手続きを完結させず、設置場所を管轄する自治体の条例も確認しましょう。
野立て太陽光発電の要否を判断する4つのパターン
出力10kW未満や屋根設置に該当しない太陽光発電事業では、立地や出力などによって必要な措置が変わります。
1.一定の区域に設置する場合は説明会が必要
説明会等の対象となる太陽光発電事業が、次のいずれかの区域に設置される場合は、原則として説明会を開催する必要があります。
- 認定申請要件となる許認可の対象エリア
- 土砂災害警戒区域または土砂災害特別警戒区域
- 土石流危険渓流
- 自治体の条例で自然環境・景観の保護を目的とする保護エリアに指定された区域
認定申請要件となる許認可には、例えば次のものがあります。
- 森林法に基づく林地開発許可
- 盛土規制法に基づく許可
- 砂防法に基づく制限として行う処分
- 地すべり等防止法に基づく許可
- 急傾斜地法に基づく許可
ただし、盛土規制法については、規制区域内にあるというだけで直ちに該当するとは限りません。実施する事業について、同法の許可が必要となるかどうかまで確認する必要があります。
このため、「低圧だから説明会は不要」と出力だけで判断することはできません。
なお、出力10kW未満の太陽光発電事業や屋根設置太陽光発電事業は、国の制度上、そもそも説明会等の対象から原則として除外されています。「特定エリアであれば出力や設置形態を問わず説明会が必要」と整理するのは正確ではありません。
2.50kW以上の太陽光発電は原則として説明会が必要
上記の区域に該当しない場合でも、説明会等の対象となる高圧電源または特別高圧電源については、原則として説明会を開催する必要があります。
ガイドライン上の出力区分は次のとおりです。
- 低圧電源:50kW未満
- 高圧電源:50kW以上2,000kW未満
- 特別高圧電源:2,000kW以上
したがって、一般的な野立て太陽光発電事業では、認定出力が50kW以上であれば、原則として説明会が必要(屋根設置を除く)と考えるのが基本です。
ただし、2026年4月改訂版では、一定の計画変更について、長期安定適格太陽光発電事業者に関する特例が設けられています。該当する案件では、説明会に代えて事前周知措置を選択できる場合があるため、変更認定については個別の確認が必要です。
3.50kW未満でも近接案件との合計が50kW以上になる場合
単体では50kW未満の低圧電源であっても、次の条件を満たす場合は、原則として説明会を開催する必要があります。
- 申請対象事業の敷地境界線から水平距離100m以内に、同一事業者またはその密接関係者が実施する別の再エネ発電事業がある
- 対象となる事業の出力を合計すると50kW以上になる
ここでいう「密接関係者」には、一定の資本関係等を有する者が含まれます。
また、合算対象となる事業には、すでに認定を受けた事業だけでなく、認定申請中の事業も含まれます。認定取得時期や設備の設置時期も問いません。
例えば、49.5kWの発電所から100m以内に、同じ法人が別の49.5kWの発電所を計画している場合には、合計99kWとなり、原則として説明会が必要になります。
ただし、距離は「発電所からおおむね100m」ではなく、各事業の実施場所の敷地境界線間の水平距離を基準に判断します。
4.通常の低圧野立て太陽光は事前周知措置を選択できる
次の条件をすべて満たす低圧の野立て太陽光発電事業では、説明会を開催するか、事前周知措置を実施するかを選択できます。
- 出力10kW以上50kW未満
- 説明会が必要となる特定エリアに該当しない
- 100m以内の同一事業者等による対象事業との出力合計が50kW以上にならない
実務上は事前周知措置を選択することが考えられますが、制度上は説明会の開催も可能です。
したがって、正確には「事前周知措置で対応可能」であり、「必ず事前周知措置を行わなければならない」という一択ではありません。
新規認定時の要否一覧
| 設置形態・出力 | 立地・条件 | 国の制度上必要となる対応 |
|---|---|---|
| 出力10kW未満の太陽光 | 住宅用太陽光 | 説明会等の対象外 |
| 屋根設置太陽光 | 屋根設置 | 説明会等の対象外。ただし実施に努める |
| 屋根設置以外・50kW以上 | 特定エリア外 | 原則として説明会 |
| 屋根設置以外・10kW以上50kW未満 | 特定エリア内 | 説明会 |
| 屋根設置以外・10kW以上50kW未満 | 100m以内の対象事業との合計が50kW以上 | 原則として説明会 |
| 屋根設置以外・10kW以上50kW未満 | 上記以外 | 説明会または事前周知措置 |
この表は新規認定時の一般的な整理です。変更認定や長期安定適格太陽光発電事業者に関する特例、自治体条例による手続きは別途確認する必要があります。
変更認定でも説明会等が必要になる場合がある
既存の認定設備について計画を変更する場合、すべての変更で説明会等が必要になるわけではありません。
変更認定が必要となる変更のうち、ガイドラインが定める次の重要な事項を変更する場合に、説明会等が必要になります。
- 事業譲渡、合併、会社分割等による認定事業者の変更
- 認定事業者の密接関係者の変更
- 再エネ発電設備の設置場所の変更
- 認定出力を20%以上または50kW以上増加させる変更
- 一定の基準日から累計して、認定出力を20%以上または50kW以上増加させる変更
- 太陽光パネルの合計出力を20%以上または50kW以上増加させる変更
- 一定の基準日から累計して、太陽光パネルの合計出力を20%以上または50kW以上増加させる変更
- 計画変更によって新たに説明会等の対象となる変更
説明会と事前周知措置のどちらが必要になるかは、原則として変更後の事業計画を前提に判断します。
計画変更に伴う説明会等は、原則として変更認定申請日の3か月前までに実施する必要があります。これは「申請前の3か月以内」という意味ではなく、原則として申請日との間に3か月以上の期間を確保するという意味です。
また、認定事業者や密接関係者を変更する場合は、原則として変更に関する契約の締結後、変更認定申請日の3か月前までに説明会等を実施します。変更が対外的に発表される場合は、その発表後に行います。
パワコン交換で認定出力が減少する場合
パワコンの老朽化などに伴う交換によって認定出力を減少させるだけであれば、ガイドラインが定める「認定出力の増加」には該当しません。
例えば、認定出力を210kWから200kWに減少させるケースで、設置場所など他の重要事項にも変更がなければ、当該出力減少を理由とする説明会等は原則として必要ありません。(あくまでも説明会等が必要でないということで、変更認定の申請は必要です)
ただし、パワコン交換に伴って次のような変更が生じる場合は、別途検討が必要です。
- 認定出力が一定以上増加する
- 太陽光パネルの合計出力も変更する
- 発電設備の設置場所を変更する
- その他、変更後の計画によって新たに説明会等の対象となる
「パワコン交換なら一律に不要」と判断せず、変更内容全体を確認することが重要です。
発電所の売買に伴う名義変更
発電所の売買や事業譲渡によって認定事業者を変更する場合は、変更認定に当たって説明会等を実施する必要があります。
説明会を開催する場合は、原則として旧認定事業者と新認定事業者の双方が出席します。事前周知措置を実施する場合は、双方の名義で実施する必要があります。
一方、ガイドライン上、相続等による認定事業者の変更は、この「事業譲渡、合併または会社分割等による変更」には含まれません。
したがって、売買・事業譲渡と相続では、説明会等の取り扱いが異なります。
FITからFIPへ移行する場合
FIT制度からFIP制度への移行に際して受ける認定については、認定要件として説明会または事前周知措置を実施することは求められていません。
ただし、FIPへの移行と同時に、設置場所や認定出力など別の重要事項を変更する場合は、その変更内容について個別に確認する必要があります。
周辺に住民がいない場合
説明会が必要となる案件であっても、周辺に住民がまったくいないことがあります。
説明会の対象となる居住者の基本的な範囲は、次のとおりです。
- 低圧電源:敷地境界線から水平距離100m以内
- 高圧・特別高圧電源:敷地境界線から水平距離300m以内
- 環境影響評価法に基づく第一種事業:敷地境界線から1km以内
これに加えて、実施場所に隣接する土地またはその土地上の建物の所有者や、市町村との事前相談によって追加された住民等が対象となります。
周辺に居住者がいないと考えられる場合でも、事業者の判断だけで手続きを省略することはできません。自治体への事前相談や、資源エネルギー庁のシステムを利用した開催案内など、ガイドライン所定の確認を行う必要があります。
一定範囲内に居住者がおらず、市町村からも追加対象者がいないとの意見があり、システム上の開催案内後も所定の期限までに土地・建物所有者から出席希望がなかった場合には、結果として説明会の開催を要しないことがあります。
事前周知措置についても、対象範囲内に居住者がいないことを確認できた場合は、結果として実施を要しないとされています。
説明会・事前周知措置の判断フロー
Q1 出力10kW未満または屋根設置か?
- はい:国の制度上、説明会等は原則として対象外
- いいえ:Q2へ
Q2 認定申請要件許認可の対象エリア、土砂災害関係区域、条例上の保護エリアなどに該当するか?
- はい:原則として説明会
- いいえ:Q3へ
Q3 認定出力が50kW以上か?
- はい:原則として説明会
- いいえ:Q4へ
Q4 敷地境界線から100m以内に同一事業者または密接関係者の対象事業があり、出力合計が50kW以上になるか?
- はい:原則として説明会
- いいえ:説明会または事前周知措置
変更認定の場合は、このフローに加えて、変更内容がガイドライン上の「重要な事項」に該当するかを確認します。
まとめ
太陽光発電事業の説明会等については、「説明会が不要なケース」と「説明会等そのものが不要なケース」を区別することが重要です。
- 出力10kW未満の太陽光と屋根設置太陽光は、国の制度上、原則として説明会等の対象外
- 50kW以上の野立て太陽光は、原則として説明会が必要
- 50kW未満でも、特定エリアや100m以内の近接案件との合算条件に該当すれば、原則として説明会が必要
- それ以外の10kW以上50kW未満の野立て太陽光は、説明会または事前周知措置を選択できる
- 一定の変更認定や事業譲渡による認定事業者の変更でも、説明会等が必要になる
- 単純な認定出力の減少やFITからFIPへの移行については、説明会等が原則として求められない
- 国の制度とは別に、自治体条例の確認が必要
説明会等の実施時期や方法が要件を満たしていない場合、認定申請の補正やスケジュールの見直しが必要になる可能性があります。設備の出力だけで判断せず、設置形態、立地、近接する事業、申請内容、自治体条例を含めて確認しましょう。
参考資料
※本記事は2026年8月時点の法令・ガイドラインをもとに、一般的な制度内容を解説したものです。個別の設備、立地、変更内容、自治体条例等によって必要な対応が異なる場合があります。
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