「10年間のFIT売電が終わったから、もう経済産業省への手続も必要ない」

そう思っていませんか?

10kW未満の住宅用太陽光発電では、FIT(固定価格買取制度)による買取期間は原則10年間です。

この期間を終えた、いわゆる「卒FIT」の太陽光発電設備が増えています。

しかし、卒FITとはあくまでFIT制度による固定価格での買取期間が終了したということです。

卒FITしたからといって、再エネ特措法上の認定に関する手続まで、すべて終了するわけではありません。

卒FIT後であっても、

  • パワコンを交換する
  • 住宅を売却する
  • 太陽光設備を相続する
  • 太陽光設備を撤去する

といった場合には、変更内容に応じて経済産業省や電力会社等への手続が必要になることがあります。

実際、経済産業省の再生可能エネルギー電子申請システムには、FITの調達期間が終了した設備を対象とした「事前変更届出(卒FIT)」という手続も用意されています。

この記事では、10kW未満の住宅用太陽光に絞って、卒FIT後に特に注意したい

①パワコン交換
②名義変更
③設備撤去・廃止

の3つについて解説します。

卒FIT=「国の認定がなくなる」ではありません

まず押さえておきたいのが、

「FIT買取期間の終了」と「再エネ特措法上の認定終了」は別

ということです。

認定を受けた再生可能エネルギー発電事業計画の内容を変更する場合には、変更内容に応じて、

  • 変更認定申請
  • 事前変更届出
  • 事後変更届出
  • 事前変更届出(卒FIT)

などの手続があります。

ここで注意したいのは、卒FIT後の変更がすべて「事前変更届出(卒FIT)」になるわけではないということです。

変更する項目によって必要な手続は異なります。

そのため、

「卒FITしているか」だけではなく、「具体的に何を変更するのか」を確認することが重要

です。

ケース1 卒FIT後にパワコンを交換する

卒FITから年数が経過すると増えてくるのが、パワーコンディショナー、いわゆる「パワコン」の交換です。

太陽光パネル自体はまだ発電できるものの、パワコンが故障したため、新しい機器へ交換するというケースです。

ここで、

「もう卒FITしているから、適合するパワコンへ交換すればそれで終わり」

と考えるのは注意が必要です。

パワコン容量と「発電設備の出力」は同じとは限りません

太陽光発電における「発電設備の出力」は、原則として、

太陽電池の合計出力とパワコン出力のいずれか小さい方

によって決まります。

※複数の系列がある場合などは計算方法が異なるため、以下は分かりやすくするための単純な例です。

例えば、

太陽電池の合計出力 5.5kW
パワコン出力    4.0kW

という設備であれば、発電設備の出力は4.0kWです。

ここでパワコンを、

4.0kW
↓
5.5kW

へ交換すると、

太陽電池の合計出力 5.5kW
パワコン出力    5.5kW

となり、発電設備の出力も4.0kWから5.5kWへ変わります。

このような場合には、卒FIT後であっても再エネ特措法上の変更手続を確認する必要があります。

一方、

太陽電池の合計出力 4.0kW
パワコン出力    4.0kW
↓
パワコン出力    5.5kW

としても、発電設備の出力そのものは4.0kWのままです。

つまり、

「パワコン容量を変更した=必ず認定上の発電設備出力が変わる」

というわけではありません。

ただし、発電設備出力が変わらなければ必ず何の手続も必要ない、とも限りません。

パワコン交換によって、

  • パワコンの自立運転機能の有無
  • 配線方法
  • その他、認定されている事業計画の内容

などに変更が生じる場合には、それぞれ手続の要否を確認する必要があります。

重要なのは、

「パワコンを交換したかどうか」ではなく、「交換によって認定事業計画のどの項目が変わるのか」

を確認することです。

また、認定上の発電設備出力を変更する場合などには、一般送配電事業者との接続契約変更等が関係する場合があります。

したがって、パワコンは交換してから手続を調べるのではなく、交換工事前に現在の認定内容と新しい設備仕様を照合することをおすすめします。

10kW以上になってしまう場合は要注意

この記事は10kW未満の住宅用太陽光を対象にしています。

パネルの増設や設備変更などによって、発電設備の出力が10kW以上になる場合には注意が必要です。

10kW以上50kW未満の太陽光発電設備は、電気事業法上「小規模事業用電気工作物」に該当し、10kW未満とは異なる保安規制が適用されます。

例えば、基礎情報の届出や使用前自己確認などが必要になります。

設備変更によって10kW以上になる場合には、再エネ特措法だけでなく、電気事業法上の取扱いについても施工会社等の専門家へ確認してください。

ケース2 住宅を売却した・相続した

次に注意したいのが、住宅の売買や相続です。

例えばAさんが住宅をBさんへ売却し、屋根に設置されている太陽光設備もBさんが引き継いだとします。

不動産登記をAさんからBさんへ変更しても、

再エネ特措法上の認定事業者まで自動的にBさんへ変更されるわけではありません。

太陽光設備については、

  1. 住宅・不動産の所有者
  2. 再エネ特措法上の認定事業者
  3. 卒FIT後の余剰電力の買取契約者

をそれぞれ確認する必要があります。

例えば、

住宅所有者 Bさん
認定事業者 Aさん
卒FIT後の売電契約者 Aさん

という状態になっていることも考えられます。

卒FIT後でも認定事業者の変更手続があります

卒FIT設備であっても、事業譲渡等によって認定事業者が変わる場合には所定の手続があります。

また、一口に「名義変更」といっても、変更の原因によって手続や必要書類は異なります。

例えば、

  • 住宅売買等に伴う事業譲渡
  • 相続
  • 離婚に伴う財産分与
  • 改姓・改名

などです。

そのため、

「名義が変わったから全部同じ手続」ではありません。

また、卒FIT後も余剰電力を電力会社や新電力等へ売電している場合には、経済産業省側の認定事業者変更とは別に、買取契約の名義変更についても確認する必要があります。

名義変更を放置するとどうなる?

例えば住宅を一度売却した後、さらに売却や相続が行われ、

現在の住宅所有者 Cさん
経済産業省の認定事業者 Aさん

という状態になってしまったとします。

この状態でパワコン交換や太陽光設備の撤去などを行おうとすると、現在の設備変更手続だけでなく、過去の名義関係についても整理が必要になる可能性があります。

時間が経過すると、

  • 当時の売買契約書が見当たらない
  • 前所有者と連絡が取れない
  • さらに相続が発生している

など、確認事項が増えてしまうこともあります。

住宅を売却・購入・相続した場合には、太陽光発電設備の認定名義も忘れずに確認しておくことが大切です。

ケース3 卒FITした太陽光設備を撤去・廃棄する

「屋根の葺き替え工事をするので、卒FITした太陽光パネルを撤去する」

というケースも今後増えていくでしょう。

この場合も、

「パネルを外したら、それですべて終了」

ではありません。

認定を受けた再生可能エネルギー発電事業を廃止した場合には、再エネ特措法に基づく再生可能エネルギー発電事業廃止届出を行う必要があります。

そして、この廃止手続では特に注意したい点があります。

【重要】撤去前・撤去工事中・撤去後の写真を残してください

現在の廃止届手続では、設置済みの発電設備について、

①撤去前
②撤去工事中
③撤去後

の写真を添付することとされています。

さらに、設備を廃棄する場合には、産業廃棄物管理票、いわゆるマニフェストの写しなど、適正に処理したことを確認するための資料が必要です。

設備を中古品として売却した場合には、売却したことを証する書類を提出します。

ここは非常に重要です。

例えば、

「数年前に太陽光パネルを撤去したけれど、廃止届を出していなかった」

という場合、

撤去前や撤去工事中の写真を今から撮影することはできません。

資料が不足しているからといって、直ちに廃止手続そのものができなくなるとは限りませんが、追加説明や代替資料について確認を求められる可能性があります。

そのため、

太陽光設備を撤去するときは、工事を始める前に廃止手続と必要書類を確認する

ことを強くおすすめします。

「卒FITだから放置しても問題ない」ではありません

ここまで読むと、

「でも卒FITしているのだから、届出をしなくても売電を止められるわけではないのでは?」

と思われるかもしれません。

確かに、卒FIT後はFIT制度による固定価格での買取期間が終了しています。

そのため、FIT期間中と同じ意味で、

「変更届を出さなかったからFITによる固定価格買取を止められる」

という問題ではありません。

また、再エネ特措法上の変更手続をしていないことだけを理由として、卒FIT後の民間事業者との買取契約が当然に停止するという単純な制度でもありません。

しかし、

「すぐに売電が止まらない」ことと、「手続をしなくてもよい」ことは別です。

手続をしないまま放置すると起こり得る問題

例えば、次のような問題が生じる可能性があります。

  • 実際の太陽光設備と経済産業省の認定情報が一致しなくなる
  • 現在の住宅所有者と認定事業者が異なる状態になる
  • 卒FIT後の売電契約名義と実際の所有者が異なる状態になる
  • 次回のパワコン交換時に、過去の変更内容について確認・整理が必要になる
  • 住宅売却時に認定情報との不一致が判明し、追加確認や是正が必要になる
  • 相続が重なることで名義関係の整理が複雑になる
  • 太陽光設備を撤去したのに、認定情報上の整理がされていない状態になる
  • 廃止手続の際に、撤去前・撤去工事中の写真が残っていない
  • 時間が経過して、当時の施工会社や資料を確認できなくなる
  • 行政から認定情報の是正等を求められる可能性がある

卒FIT後の手続は、

「売電を続けるためだけの手続」ではありません。

実際の設備や所有者と、経済産業省に登録されている認定情報を適切な状態にしておくための手続でもあります。

卒FIT後に認定を取り消されても実害はない?

「FIT期間が終わっているのだから、仮に認定を取り消されても困らないのでは?」

という疑問もあるでしょう。

確かに卒FIT後は固定価格による買取期間が終了していますので、FIT期間中と比べれば、認定取消しによる直接的な経済的不利益が小さいケースは考えられます。

しかし、それは、

「必要な変更届や廃止届を提出しなくてもよい」

という意味ではありません。

再エネ特措法では、認定事業者は認定された事業計画に従って事業を行うことが求められており、違反状態に対しては改善命令や認定取消し等の制度があります。

また、発電事業を廃止した場合には廃止届出が必要です。

重要なのは、

「罰則や売電停止があるかどうか」だけではなく、実際の設備・所有者と行政上の認定情報を一致させておくこと

です。

卒FIT設備は「工事前」に確認してください

卒FITした住宅用太陽光について避けたいのが、

工事
↓
設備変更・撤去
↓
あとから行政手続を確認

という順番です。

特に設備撤去では、撤去前・撤去工事中の写真など、工事終了後には準備できない資料があります。

基本的には、

①現在の認定内容を確認
↓
②予定している変更内容を確認
↓
③再エネ特措法上の手続を確認
↓
④必要に応じて電力会社等への手続を確認
↓
⑤必要な手続を進める
↓
⑥工事

という流れで進めることをおすすめします。

こんなときは一度確認を

卒FITした10kW未満の住宅用太陽光で、次のような予定がある場合には、現在の認定内容を一度確認してください。

  • パワコンが故障し、交換を予定している
  • パワコン容量を変更する
  • 太陽光パネルを交換・増設する
  • 蓄電池を設置する
  • 太陽光付き住宅を売却する
  • 太陽光付き中古住宅を購入する
  • 太陽光付き住宅を相続する
  • 離婚や贈与等で住宅・設備の所有者が変わる
  • 太陽光設備を撤去する
  • 発電事業を終了する

「卒FITしているから大丈夫」と自己判断せず、変更・工事の前に確認することが重要です。

卒FITとは「何もしなくてよくなること」ではありません

卒FITとは、

FIT制度による固定価格での買取期間が終了すること

です。

決して、

「経済産業省への手続もすべて終了する」

という意味ではありません。

10kW未満の住宅用太陽光でも、

  • パワコン交換
  • 住宅売買
  • 相続
  • 名義変更
  • 設備撤去

などを行う場合には、変更内容に応じて再エネ特措法上の手続が必要になることがあります。

これからは、卒FITからさらに年数が経過し、

  • パワコン故障
  • 住宅売買
  • 相続
  • 屋根改修
  • 太陽光設備撤去

といったケースが増えていくでしょう。

そのとき、

「FITは終わっているから関係ない」

と思わず、まず現在の認定内容を確認することをおすすめします。

ユックス行政書士事務所の取扱業務

ユックス行政書士事務所では、住宅用太陽光発電設備に関する再エネ特措法上の手続について、

  • 卒FIT後の各種変更手続
  • パワコン交換に伴う認定内容の確認
  • 発電設備出力等の変更手続
  • 住宅売買・事業譲渡に伴う認定事業者変更
  • 相続等に伴う認定事業者変更
  • 太陽光発電事業の廃止届出

などのご相談を承っています。

例えば、

「卒FIT後にパワコンを交換したいが、経産省への手続が必要か分からない」

「中古住宅を購入したら、太陽光の認定名義が前所有者のままだった」

「親から太陽光付き住宅を相続した」

「卒FITした太陽光設備を撤去する予定がある」

といった場合には、工事や契約を進める前に現在の認定内容を確認することをおすすめします。

京都市下京区を拠点に、再エネ(太陽光発電)関連手続き・補助金申請支援・在留資格申請等のサポートを行っております。

※太陽光発電をはじめとした再エネ設備の販売・施工業者をお探しの方もお気軽にご相談ください。販売・施工業者のご紹介も行っております。

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「行政書士又は行政書士法人でない者が、業として他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類を作成することは行政書士法違反」になりますので、行政書士でない業者への申請代行依頼はご注意ください。

参考資料

・資源エネルギー庁「変更認定申請・変更届出・廃止届」
・資源エネルギー庁「変更内容ごとの変更手続の整理表」
・再生可能エネルギー電子申請「事前変更届出(卒FIT)操作マニュアル」
・再生可能エネルギー電子申請「廃止届出登録 操作マニュアル」
・再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法